No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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オランダの教育〜「アナザースカイ」(4/13放映 ゲスト:尾木直樹)

4/13放送の「アナザースカイ」という番組を見てみました。ゲストは教育評論家の尾木直樹さん。

尾木さんがオランダの小学校を訪れてオランダの教育を紹介する内容でした。
尾木さんは学生たちに「オランダの教育はいい!オランダに行ってみなさい」といつも言っていたものの,尾木さん自身はオランダに行くのは今回が初めてだったとのこと。番組にも出ていたリヒテルズ直子さんという人が尾木さんにオランダの教育について詳しく教えてくれたそうです。
少し前は「フィンランドの教育がいい」というのをよく聞いたような気がしますが,オランダの教育もいいんですね。

オランダの教育は
  ・入学試験なし,学費無料,チャイムなし,時間割自由,宿題なし
  ・学力や住んでいるところに関係なく自由に学校を選ぶことができる
だそうで,その結果,学力も高く,労働生産性は日本の1.5倍という結果を出しているとのこと。
尾木さんが訪れた小学校は最優秀校になったこともある学校でした。上に書いたこと以外で日本の学校制度と大きく違うのは
  ・入学年齢が4〜5歳
  ・異なる年齢の子どもが一緒に学び,生徒どうしの「教わる⇔教える」によって学習能力を高める
   (学年構成が「低学年」(4〜5歳),「中学年」(日本の小学1〜3年生),「高学年」(日本の小学4〜6年生))
  ・テストや成績表がない
で,自己管理能力を高める教育を低学年のうちから進めているそうです。

最後の,日本での3学年が一緒に学び,教えあうというのが興味深かったです。発達段階や学習段階の違う人と一緒に学ぶことや「教える」という行為は,理解を深めたり発想や関心を広げたりするのに役立てられそうです。
テストもないのは驚きです。「他人と競うことに意味がないから必要ない」「相手は他人ではなく自分自身」だからだそうですが,何ができるようになったかを自分自身がわかるためや復習のきっかけとしてテストはあってもいいように思えます。競争のためでなく,学習内容や到達事項の確認としてのテストですが。

「オランダの教育は日本の3周先を行っている」(尾木)そうで,番組では司会の人も一緒になって「オランダの教育は素晴らしい」「日本ではこうはいかない」ということが繰り返し言われていました。

確かに番組に出ていた小学校は素晴らしいんだけど,うーん…。なんだかちょっと違和感。
 日本だって公立なら小学校や中学校は入学試験もないし学費も無料。
 学校選択の自由があるといっても,公立であっても学校によって方針が違うというのはいいことばかりとは思えないし…。
 「低学年」(4,5歳)の子どもがうるさく言われなくても静かに座っている様子が映ったときも,「日本だとおもちゃ屋の前で騒いでる年齢」(司会),「静かにきかないのが4歳,5歳のかわいさだと思っていた」(尾木)ということでしたが,日本でもうるさく言わなくても子どもが静かに座って話を聞いているような幼稚園はたくさんあると思うんだけど。
 「オランダは日本の3周先」というけど,日本の1〜2周前にあったことも多いのでは?(詳しくはここでは省略)
 …などなど。

オランダと日本では国の規模が違うし(オランダの面積と人口はだいたい九州と同じくらい)その他の面でもかなり違うので,「それなら日本でも」と安易に考えるのだけは避けたいところですが,見習うべき部分,参考になりそうな部分はたくさんありました。
そんなオランダの教育ですが,順風満帆というわけではなさそうです。

オランダの教育がマスメディアで紹介されることも増え、日本からの視察や研修が今年になって殺到している。もとはと言えば、2007年に発表されたユニセフの調査報告で「オランダの子どもたちが、先進21か国中最も幸せ」という結果が出されたことに起因している。
   (中略)
 だが、2007年から5年を経た今、ヨーロッパは、世界金融危機を経て、さらに、ユーロ危機のさなかでもある。いずれの危機もうまく切り抜けてきたオランダではあるが、それでも、人々の生活、学校、子どもたちの育ちには、経済危機が大きな影を落とすようになっている。

 そういう意味では、「子どもが世界一幸せなんだってね」と聞いてオランダを訪れる日本人と、現実のオランダが抱えている状況との間には、かなりのタイムラグが存在する。
−−−−
   (中略)
―――――
 「学力偏重」「競争」で疲弊し、幸福感を失った日本からは、今、オランダの70年代以降の「一人ひとりの子どもの人権を尊重した個別教育」への関心が高まっている。しかし、そういうオランダでは、政権が率先して「競争」「学力向上」を声高に叫んでいる。

 日本からの視察・研修参加者には、そのあたりのからくりを、どうか見間違えないでほしい、と思う。いつの時代も、どの社会にも、為政者と教育者の間には、子どもの人権を介して、大きな軋轢がある。

前述のリヒテルズ直子さんのブログ*1からです。いろいろと難しいですね。

*1:「経済危機の中で山積する学校への課題と教員たちの不満の増長」(オランダ 人と社会と教育と)http://hollandvannaoko.blogspot.jp/2012/03/blog-post.html