共通一次の科目2〜カリキュラム移行期の中盤の2年間(1985〜1986年)
共通一次の科目についての考察の第2弾,次の2年間(1985〜1986年)です。
時間割がシンプルで実施時間が短いのは共通一次試験が実施された全期間を通じて同じなので,科目の変化を見ていきます(引用はWikipediaの「大学共通一次学力試験」より)。
変更で現在のセンター試験に近くなった部分もあります。
1985年、高等学校の学習指導要領変更に対応して、新旧両課程の科目で試験を実施(旧課程は翌年度まで)。新課程での受験者は社会の「現代社会」と理科の「理科I」が選択必須とされる。内容は以下の通りである(試験時間は旧課程のものと同様)。
国語
該当履修科目は国語I、国語IIの2つ。これ以降評論、小説、古文、漢文の全4問
数学
「数学I」該当問題(第1問〜第3問)を必答。 「数学II」(その中でさらに第4問「代数・幾何」、第5問「基礎解析」、第6問「確率・統計」に該当する分野からいずれか2問選択)、「工業数理」、「簿記会計I・II」のいずれかから1つ選択
社会
「現代社会」、「倫理、政治・経済」のいずれか1科目、また日本史、世界史、地理のいずれか1科目の合計二科目
理科
理科Iの1科目、また物理、化学、生物、地学のいずれか1科目の合計2科目
外国語
英語(該当履修科目は英語I、英語IIの2つ)、ドイツ語、フランス語のいずれか1科目
1985年は学習指導要領の変更に対応して科目が見直されました。1986年も同じ内容で,ここまでが1000点満点(各教科200点)。
注)以下の部分では,「旧課程」(または「前の課程」)はいわゆる「現代化カリキュラム」(1973年度の高1より年次進行),「新課程」はその次のカリキュラム(1982年度の高1より年次進行)*1を指します。
新旧両方の課程の科目が実施されているので,上記の科目の問題と前回*2の科目の問題が用意されたということになります。数学だったら旧課程の「数学I」か新課程の「数学I」+選択問題のどちらか,理科だったら旧課程の「I」科目2つ(または「基礎理科」)か新課程の「理科I」+1科目(物理、化学、生物、地学のどれか)ということかな。
カリキュラムの変更で「必修」の内容も変わって全体的に前の課程に比べて軽くなり*3,共通一次の科目は必修科目のみで占められていた前年までと違って“必修科目を含む”形になりました。
数学では,必修の「数学I」は必答,それプラス選択問題で,選択問題には普通科・理数科の受験生用であろう「代数・幾何」「基礎解析」「確率・統計」の他,「工業数理」、「簿記会計I・II」も加わっています。
いろいろな教育課程を配慮しての設定ですね。センター試験での設定科目の増加とそれに伴う運営や時間割の複雑化の兆しが感じられます。
普通科・理数科の受験生は「代数・幾何」「基礎解析」「確率・統計」の3つから2つ選びますが,文系クラスでは「代数・幾何」と「基礎解析」の2つを>「代数・幾何」「基礎解析」「確率・統計」の中のいくつか*4を履修することが多かったかと思います。文系の2次試験と同じ科目が用意されるようになりました。数学II・数学Bまで用意されているセンター試験の科目設定と同じですね。“高校数学といえば微分積分”のイメージもある微分積分を含む科目である「基礎解析」を選択しないのも可能なので,センター試験で「数学II・数学B」を課すのとは少し違いますが。
また,理科では,前の課程では,例えば物理なら「物理I」と「物理II」で共通一次の科目にあるのは「物理I」のみだったのですが,新課程では「物理」で共通一次の科目も「物理」。それぞれの科目での履修内容全部が共通一次の範囲になったことになります。平成27年度以降(予定)で「基礎」付きでない科目も設定されているのと同じです。ただし,理系の学部では2次試験で理科2科目を課すところも多い中,共通一次では1科目のみ。一方,平成27年度以降(予定)では基礎なし科目2科目の科目指定も可能とのことでしたから,理科では初めて多くの大学の2次試験の科目と同じ科目が用意されることになります。