No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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算数って難しい

娘が小1の家庭訪問のときのこと。話の流れがどうだったのかは忘れましたが,担任の先生が
「1年生の算数は簡単ですからね。」
と言いました。私は,その言葉に「そうですね。」とあいづちを打ちながらも,

本当に“簡単”なのかなぁ。確かにどの子も習ってすぐにできるようになるけど,実際は“すぐに”なんかじゃなくて,長い時間――生まれてから小学校に入るまでの6年以上――をかけて「数」というものの概念や感覚を身に着けた結果なんだよなあ。誰もがいつの間にか当たり前のように身に着けているものだからこそ,どうやって身に着けたかはよくわからなかったりする。もしかしたら,算数・数学全体の中で,小学1年生の算数が一番難しいのかもしれない。

……なんてことをぼんやり考えたりしてました。

最近でも,ネット上での掛け算や足し算などのことの話題*1を見てたら,
  掛け算って何なんなんだろう,「式」で表すってどういうことだろう,「抽象化」ってどういうことなんだろう・・・
とかまでいろいろ考えてしまって,頭がこんがらがってきました。子供の成長段階のことも絡んでくるし(しかも成長の早さもタイプも子供によって違う)。
算数って難しい。


足し算,引き算,掛け算,割り算……etc。小学1年生の算数に限らず,算数で習う内容は大人だったら誰もが当たり前のようにわかって,適切に使い分けているものばかりです(難しい問題が解けるかどうかは別として)。でも,どうやってその段階に至ったのかは,よくわからなかったりします。教科書,学校の授業,塾や親から習ったこと,毎日の生活や子供同士の遊びの中での経験といったものが元になっているのでしょうが,そういった外からよく見える・ある程度見える段階の先の,それぞれの頭の中でのことは外からは見えないし,自分でも意識してない場合も多いし。頭の中で,具体的な場面を想像したり,別のもの(単なる○とか)に置き換えたりして抽象的に考えたり,経験その他から覚えた結果を使ったりといったことを何度も繰り返しながら,あるいは,もっとぼんやりといろいろ感じたり迷ったりしながら,数や式,演算といった抽象的な概念を身に着けてきたのだろうと思います。辿り着く場所(ある種の概念の獲得)が同じでも,そこまでのプロセスはきっと様々です。

学習のつまずきの原因を探るために理解や習得のプロセスの分析を試みることも大切なのでしょうが,“効率的”(経験上,あるいは,統計上)な方法を押し付けて自分で理解・習得のプロセスをつかむ力を阻害してしまったり,理解を助けるための指導が単なる“「正しく理解している」という評価をもらうための手続き”の指導になったりしまわないように願いたいです。小さな子供の場合,理解・習得のプロセスに立ち入りすぎない方がいいのかもしれません。

*1:掛け算や足し算の順序問題や,足し算や引き算の種類(合併と追加,求残と求差とか)やその指導についてとか