No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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待つ〜フジテレビ「全力教室」(2014年3月9日放映,講師:宮本哲也)

「あっ『強育論』*1の人だ!」ということで番組を録画したのを見ました。共感する部分が多かったです(東京の中学受験についてはよくわからないですが)。

講師の宮本哲也さんは宮本算数教室という中学受験の塾(生徒は小3〜小6)を主宰している人で,その教育法は「教えない」という異色のものだそうです。
生徒役は,大神いずみさん,加藤浩次さん,杉村太蔵さん,田村亮さん(ロンドンブーツ)など。

印象に残っていることをいくつか。
 注)細かい言い回し等は実際と違っています。

何も教えなければ,自分が今持っているもので戦うしかない

「これは社会に出ても有効な方法で,手取り足取り教えて有能になるかというと絶対にならない。」という言葉も続きました。
新しい“武器”(高度な知識や解き方のヒント)を安易に与えず,“自分が今持っているもの”を最大限に活用しようとすることが,算数の勉強以外でも役立っていくのでしょう。
内田樹氏がブログ*2で,不測の事態,危機的状況を生き延びるには手持ちの資源だけを使って何ができるかのシュミレーションが大事,みたいなことを書いていたのと通じるようにも思います。

一番印象に残っているのは「待つ」という言葉。

子供が考えているときは教えず待つ。
(大神)すごい時間がかかりますね
(宮本)大事なことです

(加藤)手前,手前で声をかけすぎ!
(宮本)そう! 待つ!

(杉村)一生懸命考えさせるにはどうしたらよいか?
(加藤,ロンブー亮)やる気スイッチ,ギアを入れるには?
(宮本)外から触っちゃダメ。スイッチが入るまで待つ

・途中で考えるのをやめても放っておく。放っておくとよそを見ている間も頭の中では働いている。
・解けなくても考える時間が賢い脳を作る。
・すべての子供はやる気に満ち溢れている。
・子供が何かに没頭しているのは生命力を磨いている宝の時間

というのもありました。

  待つ
  子供の力を信じて待つ

ということですね。親は余計なことをしない,何も言わないことが大事なんだそうです。


現代はIT社会,高度テクノロジー社会で,生き抜くにはスピードが命!とばかりに,もっと早く! もっと速く!とサービスも技術も進化しています。
それはそれでいいことなのだけど,それは同時に

 待たせてはいけない
 待ってはいけない
 時間をかけてはいけない
 
というメッセージにもとれ,本当によいのかと少し心配になることがあります。

いつまでも待つことはできないという状況もありますが,子供たちが

  待ってもらえるんだ,待ってもいいんだ

と思える場は残しておきたいと思います。

*1:

強育論-The art of teaching without teaching-

強育論-The art of teaching without teaching-

*2:「東北論」(内田樹の研究室 2013/04/22)http://blog.tatsuru.com/2013/04/22_0928.php