No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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高校3年生の実質授業期間

新聞に入試時期についての意見が載っていました。*1
秋入学にして,入試も入学時期に合わせて繰り下げるのがいいという意見で,その理由は現行の入試体制では高校3年生が早すぎる時期に受験準備にシフトしてしまうからということです。
気になったのは,入試時期のことはおいておいて,高校3年生の授業のことについての記述。

 1979年に共通1次試験(現在の大学入試センター試験)が導入されると,多くの普通科高校で3年生の授業期間が実質的に1ヶ月ほど短縮された。文化祭などの学校行事も繰り上げられ,遅くとも10月には共通1次対策を中心とする授業内容にシフトするのが一般的となった。
(中略)
 だから私は,せめて3年生の11月ごろまでは多様な方法や形態の授業を確保し,総合的な学力の鍛錬にあてたいと,ずっと願っていた。

「共通1次が導入されると(中略)遅くとも10月には共通1次対策を中心とする授業内容にシフトするのが一般的となった」とあるのですが,どのくらい“一般的”なんだろうと思うわけです。

私が高3のとき(1983年,普通科理系クラス)は,2学期の期末試験(12月上旬)までは普通の授業で,授業が共通1次を意識した内容になったのはその後でした。模試もありましたし,学校以外の時間に自分で対策はしていましたが。
3年生で初めて習う内容がたくさんあって*2「受験対策」の授業時間を確保できなかっただけかもしれませんが(というか,受験対策の授業時間を確保するよりたくさんの教科の履修を優先させるカリキュラムになっていたともいえます)。
他の学校のことはわかりませんが,私のときはこんな感じ。
1979年の共通1次導入と同時に一気に変わったみたいな書き方はナンダカナアと思ってしまいます(現在の高校がみんなそうだという書き方も疑問ですが)。

以前,世界史の未履修問題のときも

「受験に関係のない科目の未履修は,進学校なら「ずっと前から」行われている「アタリマエ」のことで,するのが「当然」である.」という報道も多いが今回のような問題が公立高校でおきるようになったのは94年くらいから,一気に広がったのは週5日制がはじまってからというから

と書きましたが*3,早い時期の「共通1次対策授業」を行う高校が増えたたのも,案外,同じような時期だったのではないかと想像します。あくまで想像だけど。
いろいろな本を読んでいると,どうも90年代くらいから保護者や社会が学校に期待するものが変わってきたみたいなので,これもその影響の一つではないかと思うわけです。早期の受験シフトを始めた名目が共通1次対策だったために共通1次のせいのように見えるけれど,本当のところは,保護者や社会が学校に効率的な受験対策を期待するようになったことと学校側もその期待に応えるべきだとと考えるようになったことが大きいのかもしれません。

*1:朝日新聞2012年3月23日 私の視点「大学の秋入学 高校充実へ入試繰り下げを」元東京都立国立高校長 池口康夫

*2:数学III(現在の数学IIIと数学Cに相当)の後半3分の2くらい,理科のIIを2つ,日本史と政治経済

*3:http://d.hatena.ne.jp/Cweed/20061107/1162867272