No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

※はてなダイアリーから移行しました

おいしいカレーの作り方〜「東京の空」第一八回

今日の晩御飯はカレーです。
カレーといえば思い出すのが,「東京の空」(宮本浩次/ロッキング・オン*1の第一八回 発見。筆者の宮本さんがカレーを作った話で,買い物〜カレー作りのようすがつづられています。材料は市販のルー,肉,野菜でごく普通なのですが

俺はこの日かなりノっていた。カレーの箱にはわざわざ“玉ネギ中三コ”と書いてあるところを俺は玉ネギ大四コおごった。しかも実にそれを四十分間炒め続けたのである。

このあと,炒めた玉ネギから水分が出るのを見てさらに野菜を追加し,炒めて作ったカレーはとてもおいしくて非常に感激したとのこと。

実のところ,玉ネギなどの野菜をじっくり炒めるというのは,カレー作りのコツとして目新しいことではありません。宮本さんも薄々気づいてはいますが,がっかりなんかしません。

もしかすると世間の人々は,例えば俺の母親などはこの制作法をとっくに知っていたのかもしれない。
しかし,俺は思いつきでここにたどりついた。すなわち発見なのであった。

そうなんですよね。他の誰かがすでに知っている内容でも,自分自身の力でたどりつけば,それはその人にとっては発見です。数学の問題も,受験勉強でやるような問題は,難しそうに見えても「答」がある(=誰かがすでに解いている)わけですが,解いたことのない人にとっては未解決問題であり,それを解くことは「発見」なんですよね。ろくに考えずに,解答を見て「あー,こうするのかー」なんて思うだけじゃもったいないです。

とはいえ,「こうやったらこうなった」だけでは「発見」というには少々心許ない面もありますが…

俺は感激して,本日分のカレーを冷凍庫にしまい,翌日も別の銘柄のカレールーを買ってきて,カレーを作ったのであった。すなわち冒頭に書いた食事制作上の発見というのは,カレーを作るにあたっては,玉ネギを多めに,それも四十分炒める,しかも水分の多そうなその他の野菜,キャベツやりんごなどを,ためらいなくナベにブチ込むということ。

作ったカレーのおいしさのポイントが,“玉ネギを多めに,それも四十分炒める,(中略)ためらいなくナベにブチ込む”であると「推測」するだけでなく,ルーを変えて日を置かずにもう一度作ることで「検証」までしている。宮本さん,さすがです。なんか理系っぽい。宮本さんは中学時代から数学苦手,大学も文系なんですけどね。

もう一箇所,最初のほうから引用。

それにしても読者よ。年齢を重ねることは,同時に悲しみの度合いも増すものだと思っていた俺は,いささか視点を変えるだけで,これほどまでカレーがうまくなるということを発見して,なるほど人生とはこれだから面白いと,大袈裟でなく思った。

小さな発見を重ねて,人生をもっともっと面白いものにしたいものです。

*1:

宮本浩次(エレファントカシマシ)『東京の空』

宮本浩次(エレファントカシマシ)『東京の空』