No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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「世界標準」と不安とプレッシャー〜大学の秋入学

東大が秋入学移行案を出して以来,いろいろな議論や報道がなされています。
AERA('12 2/6号)」でも取り上げられていました。
印象に残ったところを2つほど。

秋入学移行のキーワードは「国際化」のようですが,「世界標準は秋だから」という考え方に対して,冒頭のコラムより

 それについて私が経験的にいえるのは「世界標準にキャッチアップせねばならない」と言う人間が世界標準を創り出す事は原理的にありえないということである。
  (内田樹


もう1つ,特集「東大よ暴走するな」から。
東大の案だと“入試は今のまま(春),入学は秋”なので,「ギャップターム」が5ヶ月くらい生まれるのですが,子どもをもつ親としての私の気持ちと合致したのが

入学予定者は,他の人たちは何をしているのだろうと不安になるでしょうし,親も何かさせなくてはとプレッシャーを感じると思います。
 (「子どもの経済教育研究室」の泉美智子代表)

泉さんは入学まで実家にとどまる地方の低所得者層のことを想定して言っているようですが,都会に住んでいれば,あるいは,5ヶ月を都会で暮らすお金があれば問題ないということではないと思うんですよね。対策として考えられているのは「奨学金制度(=お金)」ですが,“生活する”以上の活動をしようと思えばさらにお金はかかりますし,何をするかも問題になってきます。どのような活動をするのがよいのか,活動のための情報や手続きをどうするのか,奨学金(おそらく返済が必要,つまり借金)を受けるor貯金を切り崩してする活動は将来の経済的な不安を生むのではないか…etc。まさに,不安とプレッシャーです。

入学前ということで,何をどうやってするかを子どもだけ決定していくことは難しく(未成年のことも多いですし),制度が変わったばかりだと大学入試までの頼りの高校・予備校のアドバイスも期待できないので,結局は親だのみということになります。「留学」「ボランティア活動」「インターンシップ」といっても,経験のない親はどうすればいいかわからないことも多いわけで,結局,十分な経済力や情報収集力,それに経験や人脈といったものをもつ人たち(主に都会のエリート層)とそうでない人たちの差を広げるものにしかならないように思います。

秋入学に関しての一番の正直な気持ちは
  移行の時期が自分の子どもに関係あるときでなくてよかった
です…。