No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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ウォントとニーズ〜「生きること学ぶこと」

「生きること学ぶこと」(広中平祐/集英社文庫*1を読みました。
中身は高校時代に買った「学問の発見」と同じなので,再読ということになります。
空き時間に読むべくかばんの中に入れっぱなしで,少しずつ読んでいたのですが昨日の確定申告(還付申告)の待ち時間でやっと最後までたどりつきました。

フィールズ賞をとった人だからすばらしい才能に恵まれた非凡な人というイメージしかなかったがとても正直な人だと思った。それにこの人はとても根気強いなと思った。またやはり数学が好きなんだな,という気もした。

というのは高校時代の感想。偉そうなところや押し付けがましいところがなく,よい意味でのいい加減な印象は今読んでもそのままでした。

数学って素敵だなと感じてくることも変わらず。高校時代の感想の最後は「自分も数学がしたいと思う(単純だなあ)」。大学の数学がどんなものか全く知らないのになぜか数学の世界に憧れたんですよね。私の進路選択に大きな影響を与えた本です(進路選択が正解だったかどうかは保留にして…)

進路の選択に関連して「欲望(ウォント)と必要(ニーズ)」の章より

 若い読者諸君には,特にこのことを強調しておきたい。自分の将来を決めていくという時に,いろいろな情報がある。例えば,自分の偏差値がこの程度だからあの大学のこういう学部にいこうとか,こういう職種が有望だからこの企業に就職しようという具合に,いろいろな情報からニーズを割り出して進路を決める人が非常に多い。
 しかし,そういう決め方をした人は,なんらかの方法でニーズから割り出したものがウォントに切り替わらない限り,どこかで挫折するのではないかと思う。「自分はこの学問をしたいんだ」「私はこの仕事につきたいんだ」というウォントをもった意志力がなければならないのである。

“ニーズ”は理性による判断から生まれた「必要」,“ウォント”は現在の自分の中にある何かとてもいたたまれないような,場合によってはたまらなく爆発したくなるような情念から生まれた「必要」とのこと。時間的には「ニーズ」が過去から未来を基準として割り出した必要性,「ウォント」は現在と未来に時間軸をとった必要性。
「成功する秘訣」に,「成功するまでやめないこと」というのがありますが,“続けられる人=ウォントをもった人”が成功するということでしょう。

ウォントとニーズについては,企業活動について

余談になるが,よく企業のパンフレットなどに,「消費者のニーズをよく捉えて…」などと書かれているが,この表現はあまりよいとは思えない。ニーズというのは要するに過去の知識から割り出しただけのものであるから,そんなことをやっていたら企業は立ち遅れてしまう。それを書くならば,「消費者のウォントを見抜いて…」と書くべきだろう。

というのもありました。最近,企業の業績悪化をニュースで聞くことも多いですが,過去のデータからのニーズの分析ではなく,自分自身のウォントや未来の人々のウォントを見つけ出すことが大切なのかもしれません。

*1:

生きること学ぶこと (集英社文庫)

生きること学ぶこと (集英社文庫)