No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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放射性物質と危険性〜対数目盛

新聞*1放射性物質と危険性の記事が載っていました。

数値と影響の対応の図もあります。左側の図の小さい値の部分を大きくしたのが右側のだなと思いながら見ていたら,あれ?目盛りの数字が左側は5000,4000,3000,…と1000ごとなのに,右側は10,1,0.1,…。目盛りの間隔は一定ではありません。左側の図を単純に拡大したというわけではなさそうです。
   


右側の目盛りは,10,1,0.1,0.01…。10分の1ずつになっています。もしかして対数目盛?ということで調べてみました。

対数目盛というのはデータの幅が大きいものなんかに便利な目盛だそうで,工学ではよく使うようです。

対数目盛りは0がない特殊目盛りで、数値を10^xであらわしたときの指数xを尺度としている。0.1-1,1-10,10-100間が同じ間隔となっている。

だそうです。*2
0.1〜1(10^{-1}10^0),1〜10(10^{0}10^1),10〜100(10^{1}10^2)などが等間隔なので(この間隔を「目盛1個分」と呼ぶことにします)
   目盛が1個分違う ⇔ 10^xとあらわしたときのxが1違う(つまり10倍違う)
というわけです。つまり
   10(=10^1)倍大きい→目盛1個分上(この図の場合)にある
   100(=10^2)倍大きい→目盛2個分上にある
のように
   10^x倍大きい→目盛x個分上にある

ということですね。


じゃあ,間の数字,例えば0.6は対数目盛だとどのあたりになるんでしょう。
0.6は0.1の6倍なので,6=10^XとなるXがわかれば
   0.1の10^X倍の大きさ→0.1の目盛より目盛X個分上にある
となるわけです。常用対数の出番ですね。6=10^XとなるXは,X=\log_{10}6なので,約0.7782となります。
図では「0.6 胃のX線検診(1回)」は0.1と1の間の真ん中より少しだけ上のあたりにあるのですが,対数目盛だとすると,本当はもっと上のほうにあるということになります。
対数目盛っぽく見えましたが正確な対数目盛というわけではなさそうです。


…というか,右の図の一番下が0っぽい時点で,対数目盛じゃないですね…。対数目盛りは,“0がない目盛”でした。

0に近いすごーく小さい数(ただし正)は1の目盛のずーっと下にある,もっと小さい数はもっと下にある…というわけで,0は無限に下にある(つまり,0の目盛はない)わけです。

例えば,ウラン2350.000007(=7\times 10^{-6})にしても,10^{-5}より少し小さい値ですが,10^{-5}0.01(10^{-2})1000(=10^3)倍違うので,対数目盛なら,0.01から3目盛分よりも下となって,図の位置よりずっと下にあるはずです。

右側の図の目盛が対数目盛じゃなかったのは当然といえば当然で(スペースも足りないし,知識のない人が見たら混乱しそうだし),0.01〜10を対数目盛っぽく圧縮しただけということですね。まぁ,左の図だって,1000以下はスケールが違うわけで…。限られたスペースに見やすく,わかりやすく数値や文字を配置するための方法ですね。
記事などの図やグラフは目盛が正確でない場合も多いので,図などをもとに判断するときは,パッと見た印象で決めつけないことが大切です。


(11月28日 13:54追記)対数目盛の説明部分を少し修正しました。

*1:2011年11月26日朝日新聞土曜版be

*2:http://chemeng.in.coocan.jp/ice/ice_uc.html より