No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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入試不正事件と「ネットと覚えること」のアンケート

京大を含む4大学の不正入試入試不正事件は,事件の全容がだいたい明らかになったということで,テレビや新聞では分析の段階に入ったようです。

で,いろんなところで持ち出されるのが「ネットと覚えること」のアンケート結果*1
朝日新聞(2011 3/4付)でもこのアンケートを載せて,見出しも,「ネット世代「覚えるより知識外注」」。
 
このアンケートを持ち出すのって,なんだか,ちょっとずれてない?
 
今回不正があったのは,英作文や記述式の数学の問題であり,“覚えた知識をそのまま引き出す”タイプの問題ではないんだから。
どうも,“入試=記憶力テスト→知識を外注すれば楽勝”と思っている人がいるらしい。
 
逮捕された予備校生が外注したのは,「知識」ではなくて,「思考」なんじゃないかと思う。
 
今回の不正は,掲示板の回答を検証もせず,そのまま書き写したようなので,替え玉受験に近い気がする。
「替え玉」が特定の人物ではなく,信頼性も確認されてないだけで,「替え玉」の思考結果を受験生の思考結果として提出したのは同じ。
 
 
しかし,このアンケートの読み取り方は恣意的だなぁ。
“ネットに依存した世代,昔では考えられない思考の世代”のイメージありきという感じ。
36%を「3割以上」とするか,「4割以下」とするかで印象は違いますね。
 
   覚えたほうがいい/どちらかというと無理に覚えたほうがいいで,合わせて63.9%。
これだけネットが発達し,検索機能を使いこなせる世代でも,3人に2人は脳内の知識の有用性を感じているとも読める。


それに,「3割」が,他の世代に比べて多いのかもわからないし,昔の受験生の意識に比べて増えたのかも不明だから,驚くべき内容なのか

,本当のところはわからない。
「“無理に”覚える必要は〜」という選択肢の設定も,「覚える必要はない」という回答を引き出そうとする意図を感じてしまう。
ネットがなかった時代に同じアンケート(「ネットで」のかわりに「本などですぐに」として)をしても,たいして変わらない結果だったかもしれません。