No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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未履修問題について考える

今回の事件にからめて,いろんなことを考えたり,調べたりしている.私がが何か考えても,世間的には何の力もない.考えてもしょうがないことかもしれないけど,考えてしまう.

日本がこれほど文化の発展した安心して住める社会であるのは,全国一律に保証された教育の賜物だと思う.
「教育問題」は,自分や自分の子供に降りかかる直接の利害の問題としてではなく,社会全体の問題として捉えなければならないとも思っている.

 
id:zkai:20061101さんの記事より,

最後に、10月30日のid:sigmundさんのコメントを紹介しますね。
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本来、学問というものは役に立たないものかもしれません。
しかし、学問を修めていくからこそ、高い文化水準や道徳が生まれ、今日の日本があるのだと思います。

だから、今回の履修問題をただ単に受験のためということではなく、高校で学ぶことは幅広い教養を身につけることの一部としてとらえて、問題解決に向かってほしいと思います

私も,本当にそう思う.
 

ところが,今回の未履修問題での報道をみてると,

  「受験に関係のない科目は無駄」で,その科目の授業をまじめに受けるのは「損」で「要領が悪い」こと
という感じだ.
 
  受験に関係のない科目の未履修は,進学校なら「ずっと前から」行われている「アタリマエ」のことで,するのが「当然」である.
という報道も多いが今回のような問題が公立高校でおきるようになったのは94年くらいから,一気に広がったのは週5日制がはじまってからというから,高校生はともかく,ベテラン教員が「ずっと前から」というのは違う気がする.

 
id:zkai:20061102 に紹介されてた亀井信明氏のコメントも読んでみた.「受験」「エリート養成」という視点からの本音の発言.数学の教科書が新課程でダメになっていること,目先のことだけを考えて教育課程をちょこちょこいじるから余計おかしくなることなど同意できる部分も多い.(ただ,家庭科のこと*1はちょっと・・・)

私自身は「高校は単なる大学受験予備校ではない」と思ってるけど,国までが

「指導要領は大学受験とは関係ない」と文科省は言うのでしょうが、小泉改革の競争原理が教育現場にまで持ち込まれて進学重点校なるものがいっぱい作られているのです。(中略)ところが、現行教育課程は学校の週5日制を導入しました。授業の時間枠が縮小したのに進学成果を残せと言われ、教育現場にはすさまじいプレッシャーをかかっています。

という状態では,高校生やその保護者だけでなく,高校側までも「受験」という視点からしか教育課程を見られなくなりがちなのも無理ないのかもしれない.やはりそれではいけないと思うけど.

*1:「無理もないんです。東大に受かるために必死になって勉強している生徒に、家庭科が必修になっている。教育現場は矛盾でいっぱいなんです。」というが,家庭科が女子のみ必修だったときはだれも「無駄」とはいわなかった気がするのに,なぜ?東大や京大目指す女の子も家庭科を履修していた.