No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

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060628教科書検定意見展示

060628教科書検定意見展示

昨日,今日の2日にわたって行ってきました,教科書検定意見展示at山口児童センター.

平日昼間,しかも公開期間の中程とあって,私がいた2日間計3時間余りの間,私以外の閲覧者はまったくなく,おかげで検定意見書と教科書(数学)を独り占めできました.

id:zkai:20060509さんとも重なる部分もありますが,まずは全体的に・・・

教科書はどれもますますカラフルになり,小・中の教科書にみられる,イラスト入りのもの,巻末切り取り付録がついたものも.巻末にアルファベットの筆記体の表があるものもありました.(6とbなど)間違えやすい文字の区別のため筆記体を用いることも多いという注意書き付き.

指導要領を超えてもOK,ということでしたが,指導要領外のものと内のものとをはっきり区別することにピリピリしている感じ.「これは「外」だから,「発展」に」というものが多かった.(逆に「内」だから「発展」ではダメというのも少しあった).(特に数学Ⅰ)

指導要領内での進んだ内容は「参考」,「研究」など教科書によって違いますが,指導要領外の内容は「発展」で統一.目次等で「学習指導要領外の内容.必ずしも全員が学習する必要はない」の注意書きもあります.「発展」「研究」の区分は目次にもはっきり記されており,指導要領外の内容がどれか一目でわかります.この統一はわかりやすくていいかも.

数学Aで目に付いたのは,「これは数学Ⅰで学習する内容だから未習のものもいる」というもの.絶対値記号,「実数」「有理数無理数」の定義,指数法則(指数が0や負の数),不等式や2次関数に関するものなどに検定意見がついていました.簡単な説明をつけたり,言い回しを変えたりして対応したものもありましたが,不等式に関する例題ものなど,問題を差し替えられたものも.旧課程では中学で学習していた基本的な内容を高校に持ってきたこと,数学Ⅰ,数学Aと科目を2つに分けたこと(1つ前の課程からそうですが・・・)で,説明のしかたや例題に制約がついてしまっているようです.


細かいところでは・・・

◆「D」の扱い
問題文にない文字,a,b,cを用いてD=b^2-4acとしている件,「zkaiさんの勘違いじゃ・・・(失礼!)」という淡い期待もむなしく,そのとおりの記述.

D=b^2-4acであることの説明なしにDを用いることは学習指導要領に示す数学Ⅱの内容の判別式の扱いに該当し,扱いが不適切である

当該箇所の記述中にこの記号についての説明がなく,学習するうえに理解できないという支障を生じるおそれがある

などの検定意見で,ことごとく「=b^2-4ac」が付け加えられていました.解答の前に「考え方」で,
 「ax^2+bx+c=0において,D=b^2-4acとおくと〜」
と立式の考え方が示してあってもダメで,「解答」中に「=b^2-4ac」を付け加えてOK.解答中の式の意味を明らかにしてあげたいという気持ちはわかるけど,問題文にない文字を勝手に持ってくるのはやっぱりマズイし,2次方程式の係数がa,b,cで表されるとは限らないのに・・・.
「発展」の記述では,「=b^2-4ac」がなくてもOKのものもありました.(ax^2+(b-m)x+c-n=0について考えていたので,さすがに「=b^2-4ac」とはできなかったようです)

「判別式」の用語が「発展」で取り上げられた教科書が1冊だけありましたが,この教科書も含め,本文中に「判別式」の用語が使われたものはありませんでした.
 
◆ピックの公式
あの書き方じゃ削除も当然でしょう.きちんとした証明はないのに,囲みつきで公式を示し,その後「ピックの公式を使って解いてみよう」の例題.これじゃ,ピックの公式を「使っていい公式」と認識しそうだ.削除されてヤレヤレ.
 
◆分数式の処理
分数式の処理を含む複雑な等式変形は指導要領外だそうです.「発展」で分数式の処理についてページを割いた教科書もありました.
 
◆ブラマグプタの公式
 円に内接する4角形の面積と辺の長さの公式.「発展」で取り上げた教科書もあった.
 
◆重複組み合わせ
「重複組み合わせ」の用語や,nHrの記号が出てくるものは「発展」扱い.「重複を許してとる組み合わせ」として,nHrの記号も出てこないものは「参考」止まりのよう.ほとんどの教科書で扱ってる.
 
◆数学Aにおける不等式
確率が0以上1以下であることの説明で,
「不等式0≦n(A)≦n(U)の両辺をn(U)で割ると,0≦n(A)/n(U)≦1」
に,「不等式は数学Ⅰの学習内容で〜」の検定意見に対し,「不等式」ということばだけ取ってOKというのにはちょっと・・・.不等式の両辺をn(U)で割っているけど,不等式の扱いが未習なのにいいの?
n(U)>0の確認もないし,これじゃ単純に「(わる数の符号に関係なく)不等号の式は等式のときと同じように割り算すればいいんだな(不等号の向きはそのままでいい)」と思っちゃうのでは?数学Ⅰで習ったとき,きちんと修正されればいいんだけど.(数学Ⅰは全員履修)
 
◆条件付確率,積事象の確率(P(A∩B)=P(A)・P_A(B))
数学A「発展」で扱われている教科書が複数あり.
 
◆その他
・「直径に対する円周角」はダメ(弦に対する円周角なんてないから).「半円の弧に対する円周角」としてOK.「直径に対する円周角」の記述はよく見るような気がするけど,「弦〜に対する円周角」は,確かに直径以外の弦ではマズイ.
・「接弦定理」の用語は弦が円に接するみたいだからダメ.「接線と弦のなす角」はOK.わかりにくいからって一般的な呼び名を否定するのはどうかと思うんだけど.それに「接線と弦のなす角だから」と書くより,「接弦定理より」の方が短いし,考え方も伝わりやすいと思うんだけど.

 
・・・などなど.

閲覧後に食べたマンゴーシャーベット〈杏仁風味仕立て〉(会場の自販機) がおいしかったです.