No Haste, No Chains ~数学の教育をつくろう~

※はてなダイアリーから移行しました

教科書の検定意見

id:zkai:20060509さんのブログに高校教科書の検定意見書についての報告がありました.数学についてはかなり詳しい報告です.
それを読んでの感想などを思いつくままに・・・(イタリックはid:zkaiさんのブログからの引用)
※教科書を見ると〜は私の手元にあるものについてに過ぎません.
※「昔の教科書」は私が1981年に使ったもの(数Ⅰ,昭和53年3月検定)
 
◆「学習指導要領に明記されていないことを「研究」という枠組みで紹介するのはダメで、すべて「発展」という枠組みに統一するよう意見がつく傾向あり 」
私のイメージでは,指導要領の範囲からすぐたどり着けるのが「発展」,たどり着くのに高度な思考が必要なものや特殊なものが「研究」というイメージ(言葉のイメージ)だったのだけど.「発展」だと入試で出てもおかしくないというイメージ.「発展」と「研究」では,指導上の扱いが違うのかな?ちなみに昔の教科書には「発展」も「研究」もありません.すべて必須事項という扱いだったということ?
 
◆ピックの公式
格子点の個数に関する公式らしい.「ピックの公式」という名前まで出てたのかな?証明は?
格子点の個数の考察は面倒なものが多い.面倒な考察を省略できる(できそうな)公式を結果だけ覚えて使いたがる受験生は多いようだけど,私はあまり好ましいとは思わない.教科書に載ってしまうと,証明なしで使っていい(あるいは使っても少しの減点のみ)というお墨付きも与えそう(実際に大学がどう対応するかわからないけど)だし,削除で正解だと思う.

ピックの公式を載せてる参考書はあるのかな?と調べたら,「ISBN:488742017X:title」(東京出版)に証明(数学的帰納法)つきで紹介されてた.

 
◆放物線と直線の共有点
放物線の式が出てきたら,当然できることと思っていたが,確かに教科書に載ってない.「発展」事項だったんだ.青チャートでは補充事項として扱われている.厳密には数Ⅱの「図形と方程式」の分野なんだろう.数Ⅱの教科書にも出てこないけど.(出てくるのは直線と直線,直線と円)
 
◆「D=b^2-4ac=2^2-4・1・5=-16<0なので〜」と、例題の問題文では全く現れていないa,b,cというアルファベットを付け足して修正OKとしている姿勢には戸惑いました 
全く同感.問題文にはない文字を説明なしに用いないというのは大切な習慣のはず.公式の丸暗記奨励という感じもする.
(追加)現行,旧課程どちらの教科書にも「判別式」という用語が出てこない.(昔の教科書には出てくる.いつなくなったんだろう)「(a,b,cの説明なしに)D=b^2-4ac〜」の記述は,「判別式」という用語を避けたための苦肉の策ということかも.「行列式」もそうだけど,用語の導入を避けたため,説明がしにくくなっているようだ.
(さらに追加)「判別式」は数Ⅱで出てきた(現行,旧とも).複素数の導入が数Ⅱに移った関係らしい.
 
◆2重根号
指導要領の中では,2重根号をはずすことは扱わないって明言されてたけど,入試ではここまで求められることもあるということかな?
 
◆根号の開平法
開平法,教科書には載ってなかったけど,習ったなぁ(中学だったような).√2を計算すると1.414とちゃんと出てきて感動.平方根表(そういえば今の教科書にはない)よりも詳しく出すぞと張り切ったものの,桁数が多くなってすぐに放棄.今は電卓も安いし,「だからどうした?」って感じになるのかなぁ.“自分で出せる”ってのがうれしいのに.
 
◆絶対値方程式・不等式,複2次式の因数分解
絶対値の中身がxやx-1なんかのものは今の教科書にも載ってる.「研究」扱いになったのはどんなタイプなんだろう.削除された複2次式のタイプも気になる.地元会場での展示では気をつけてみてみよう.
昔の教科書には,「|x^2-5x|<6を解け」(章末問題)とか「(x^2の2次式と考えることにより”のヒントつきで)x^4+x^2-2を因数分解せよ」(練習問題)とかがある.